ここから先は余談ですが僕の話をします。
僕は過去世を霊視することはできません。退行催眠を行うこともありません。
僕自身、昔は自分の過去世をとっても気にしていたんですよね。
それは、現世で抱えるさまざまな原因は過去世にあると信じていたからです。
だから過去世を知る必要があると思ってました。自分の過去世に強い興味がありました。
だからスピリチュアルな学びを始めてから、自分のガイドとのつながりが少しずつ強まるにつれ、
「今の自分が抱える問題の原因となった過去世を教えてほしい」と事あるごとに頼んでいました。
僕のそのような要請に対し、ガイド、あるいはハイヤーセルフは、
ときに瞑想のなかで、ときに夢のなかで、過去世の自分を少しずつ少しずつ見せてくれました。
たとえば、若い頃の僕は「自分を表現するクリエーターのような仕事をしたい」と思いながら、
そういうものと関係のない仕事ばかりしてきました。
子供の頃は絵を描くのが好きでずっと絵ばかり描いていたんですよね。
特別上手いわけではありませんでしたが、幼稚園に入って初めてみんなでお絵かきをしたときに、他の園児の描く絵があまりに下手なのでびっくりした思い出があります。笑
子供ながらに「なんでこんな簡単なものが描けないんだろう」と。
嫌な子供ですね。笑
子供の頃は特に運動や勉強ができたわけではなく、唯一褒められることといったら絵を描くことだったんです。
では、将来画家になりたかったのかといったらまったく逆でした。
毎日絵ばかり描いていながら「画家にだけはなりたくない」と思っていたのです。
矛盾していますね。
子供ながらに、「画家になっても生活できるはずがない」という確信があったのです。どういうわけか……。
誰かに言われたわけではなく、自然とそう感じていたのです。
大人になって、絵を描くことはすっかりなくなっていました。
でもなくなっていたけれど、心のどこかで「絵を描きたい」とは思っていました。
プロの画家になろうとは思わなかったですが、絵を描くという行為が、その当時の僕には必要な気がしていたのです。
けれどなかなか描きだすことはしませんでした。
そして、スピリチュアルな学びを始めてしばらく経って、ある日当然、ガイドは僕にある過去世を見せてくれました。
それは、画家として一生を過ごした僕の過去世でした。
しかし、その人生で僕の描く絵はほとんど売れず、けれど自信だけは人一倍あり、
でも作品は売れないからいつもお金に困り、最後には若くして自ら命を絶った人生でした。
その過去世を知って、幼い頃に早々と絵をあきらめた理由がわかった気がしました。
自分のマインドの奥深くで、その画家だった人生の記憶がかすかにあったのかもしれません。
正確には、すべては今同時に存在しているので(過去世の自分も今を生きています)、
記憶というよりも、リアルタイムで感じとったと言うほうが正しいかもしれません。
これも今までの話と同様に、僕が絵を描くことをためらった要因は過去世にあるように感じます。
しかしこのケースも同じように、本当の原因は今現在(当時の)マインドの中にあって過去世にあるのではありません。
なぜなら、その『売れない画家で苦労するという人生』もまたマインドが起点となってつくられていたからです。
なぜそのような人生をマインドはつくりだしたのでしょうか。
ここでもまた原因の中に、別の原因を探さなくてはならなくなります。
そのときのマインドと、現世のマインドは違うマインドでしょうか。
同じです。マインドは一つです。生まれ変わるたびにマインドも再生するわけではありません。
マインドは常に時間の外側、この世界の外側にあるわけです。
ですから、その問題を今見ているということは、今もそのときと同じマインドであるということです。
過去世であっても、今の人生の過去であっても、
そのときと現在とでマインドが変わっているのかいないのか確認する方法があります。
それは、
「もしもまた過去のそのときと同じ状況に陥ったとき、自分はどう反応するのか?」
と自分自身に尋ねるのです。
もしも過去と同じような反応(行動パターン)をするようならば、
当時のマインドと今のマインドは変わっていないことになります。
変わっていなければ、そのときのレッスンは完了していないことになります。
僕がその過去世を見せられたのはまさにそれが理由です。
過去世に原因があるのではなく、同じマインドが過去世と現世の原因になっていたわけです。
他にもこんなことがありました。
僕が仕事をリストラされたり、夢をあきらめたりしてひどく悲観的になっていた時期がありました。
「これからどうやって生きていけばいいのか」、「今から自分にできることがあるんだろうか」、
そう悩んでいた時期、ある日ガイドは夢の中でこんな過去世を見せてくれました。
次から次にいろんな男の顔が現れました。
スマホの写真閲覧アプリをスワイプするみたいに、いろんな人種のいろんな男たちの顔です。
次に、さまざまな職業が書かれたリストを見せられました。
そして、ガイドのこんな声が聞こえてきました。
「おまえは今までこれだけのことをしてきた」
これはつまり、「過去世でいろんな職業に就いてきたのだから、自分が無能だなんて考えてはいけない」
そう伝えたかったのでしょう。
結局、その後でリストにあったような職業には就いていませんが(職人みたいな仕事が多かったです)、
過去世を引き合いに出して勇気づけようとしてくれたんですね。
ありがたいことです。
ただガイドだろうがハイヤーセルフだろうが、私たちが依頼したら何でも教えてくれるわけじゃありません。
むしろ教えてくれないことのほうが多いです。
僕は長年皮膚病を患って苦労したのですが、それも同様に原因は過去世にあるんだと信じていました。
その過去世は何だったのか、どうしたら病気が治るのか、何年も教えてほしいと懇願してきましたがついに一度も答えは返ってきませんでした。
結局、過去世に原因があるわけじゃないから教えようがなかったのかもしれません。
あるいは過去世に原因が(正確には原因らしく見えるもの)があったとしても、
僕の場合は、その時点で知ったところで治りようがなかったのかもしれません。
知ったほうが成長の助け、学びの助けになると思えば教える。
逆に妨げになるようなら教えない。
いかなるときでも先のことまで見越して私たちのことを考えたうえで判断してくれています。
ありがたいですね。
基本的には、過去世も来世も知らなくていいことなのです。
世の中のほとんどの人は自分の過去世なんか知りません。
知らなくても生きていけるのです。知らなくてもよいから過去世の記憶がないのです。
結局は【今ここ】で起きていることは、たった今、マインドでつくられているわけです。
よって過去世と呼ばれるものは、現在と関連性はあるものの基本的に繋がりはないのです。
何度も言っていますが、過去も、現在も、今同時につくられているからです。
この図では線上で表されていますが、実際は点のようなものです。
点は隣り合っていてもそれぞれに繋がりはありません。
過去世に原因を探しても、過去世に原因はありません。
答えは常に【今ここ】にあります。
【今ここ】を生きるために必要なヒントは常に【今ここ】にあります。
そして、過去世にこだわりたくなるときがもう一つあります。
それは、これまでの自分の人生にひどく失望しているときです。
そういうとき、過去世に何らかの慰めを求めてしまうのです。
「今の人生がこんなにひどいのは、過去世でひどいことをしたカルマに違いない」
「今の人生は望みどおりじゃないけれど、きっと人もうらやむ人生が過去世であったかもしれない」
そんなふうにして、現世の不満や劣等感を、自分が納得できそうな過去世を見つけることによって心のバランスを保とうとするのです。
誰にとっても、過去世は無数にあります。
無数にあって、それこそ何だってあるのです。
『並行世』の説明でも書きましたが、過去世だって並行世と同様にさまざまタイプの人生を同時に経験しているのです。
男だったり、女だったり、同性愛者だったり……
アジア系だったり、アフリカ系だったり、白人だったり……
スーパーモデルやハリウッドスターのような容姿で周りにチヤホヤされた人生だったこともあれば、
「ブス」だの「ブサイク」だのと馬鹿にされ、劣等感と孤独感に苦しむ人生もあったりします。
子供ができないと悩む人生もあれば、子だくさんで子育てに苦労する人生もあります。
大富豪の家に生まれた人生もあれば、スラム街で生まれた人生もあります。
大富豪だったけど、やがてホームレスに転落した人生もあれば、
ホームレスから大富豪に登りつめた人生もあったりするでしょう。
英雄と呼ばれ人々の尊敬を集めた人生もあれば、
平気で人をだましたり、傷つけたりしていた人生もあったりするでしょう。
地球人だった人生もあれば、他の惑星にいた人生もあります。
あるいは人間以外の動物だった過去世もあるでしょう。
過去世を視ることができる霊能者は視えたままを伝えることは少ないかもしれません。
なぜなら、依頼人はある期待をもって霊視を依頼するわけです。
「こんなふうな前世だったらいいな」という期待です。
女性なら高貴な位の人物とか、男性なら侍だったとか、
現世の自分に不満があればあるほど、過去世は立派な人間であってほしいと期待するものです。
しかし上記のように、人々の尊敬を集めた人生もあれば、情けない一生を送った人生もあるのです。
「あなたの前世は物乞いでした」とか、
「あなたは前世で詐欺師でした」とか「強姦魔でした」などと言われたら大抵の依頼人は怒り出します。笑
だから霊能者は、視えた過去世の中から依頼人が喜びそうなものだけをピックアップして伝えたりするわけです。
そういう類のリーディングというのは占いの類に近いものです。
相手が喜ぶことだけ言ってあげてお金をもらう、ただそれだけです。
依頼人の霊的成長にはほとんど役に立たないと思います。
僕も昔は自分の過去世にそういう期待をしました。
「どうか善人でありますように」とか「歴史上有名な人だったいいな」とか。笑
でも、スピリチュアルな学びを続けるにつれ、そういう期待自体が無意味であると気づいたわけです。
だって結局あらゆる立場を経験するわけですから。
何か一つ二つの過去世を知って一喜一憂しても仕方ないのです。
僕がカウンセラーを始めてみたものの、
「自分くらいの学びのレベルで、はたして誰かを救えるだろうか……」と悩んでいたとき、
ガイドは、再び夢の中で、
「おまえは聖○○だったことがある」
「さらに聖○○だったこともある」
と僕に聖人と呼ばれた過去世があったことを伝えてくれました。
僕は宗教史に詳しくないので名前を言われてもわかりませんし、
それが本当かどうか何も証明するものはありません。まぁ僕を奮起させたかったのでしょう。
その一方で、その夢よりも前ですが、こんなショックな夢を見ました。
江戸時代なのか、もっと古い時代なのかもしれませんが、僕が刀で人を斬りつけている夢でした。
僕はそのとき侍なのか、あるいは侍でもなんでもなく、たまたま刀を持っていただけかもしれません。
どうやら果し合いで斬りつけたわけではなく、感情的にカッとなって相手を殺してしまったようでした。
そして、それを見ていた通りすがりの人間に「人殺し!」と叫ばれて理性を失い、その通行人をも理不尽に斬りつけてしまう……そんな夢でした。
ほとんど通り魔です。
目が覚めて「夢だったんだ……」とホッとしましたが、
あまりに生々しい夢だったので「これは自分の過去世なんだ」と感じたのです。
こういう夢は(こういう過去世は)スピリチュアルな学びを始めて間もない頃には絶対に見ないと思います。
普通はショックで受け入れられないですから。
学びを進めていくうちに、自分が望む望まないに関わらず、
自分のマインドにさまざまなものを受け入れてゆくスペースができてきたのだと思います。
だからガイドやハイヤーセルフは「今なら大丈夫」と判断してこういうものを見せるわけです。
なぜ見せるのかというと、それは『ゆるす』ための何ものでもありません。
自分のどんな人生も、他人のどんな人生もゆるしていく。
それがこの世界の幻想から目覚める唯一の方法だからです。
自分がしてきたことをゆるせなければ、他人をゆるすことはできません。
他人をゆるすことができなければ、同じことをした自分のこともゆるすことはできません。
過去世も、現世も、そして来世も、すべては幻想です。真実ではありません。
幻想だからゆるさなくてはならないのです。
「ゆるせない」=「それが現実と信じ続けている」です。
誤解されたら困るのですが、幻想だから誰かを傷つけていいわけではありません。
だって「他人が存在する」のは幻想で、本当はすべてが一つの存在ですから。
誰かを傷つけて、やがて苦しむのは自分自身です。
たとえるなら、右手で刃物をもって自分の左手を傷つけるようなものです。
結局痛みで苦しむことになるのは“自分”しかいないのです。
過去世にこだわることに意味はありません。
そして来世も同様です。
何度も言ってますが、それらを知って役に立つことも時にはあります。
けれど、知らなくても人は生きてゆけるし、学び成長することもできるのです。
今の自分にできることは、結局今の人生を少しでも自分にとって幸せと思える人生に変えてゆくこと。
今、自分の目の前にある幻想の一つひとつをゆるしていくこと。
【今ここ】を生きる自分が、自分のやれる限りのことを精いっぱいやってみる、それしかないのではないでしょうか。
それが現世の自分のレッスンだからです。